三越製作所
受け継がれる匠の技と美意識

2021.03.10 Wednesday - 03.16 Tuesday
Nihombashi Mitsukoshi Main Store Central Hall

History

三越製作所の歴史

1

絵図面

〈徳川侯爵邸 昭和2年7月20日 第四客室 紋ビロードカーテン〉

1910年(明治43年)、三越呉服店の家具工場、家具加工部として「三越製作所」は誕生しました。時代の変遷とともに、生活様式の近代化と建築の西洋化が次第に進むにつれ、富裕層の間で応接施設として、屋敷の一部に洋館を増築する機運が高まりました。展示の〈絵図面〉は、徳川侯爵邸における室内装飾の提案用図面。洋館の室内装飾や西洋家具の特注製作を担っていた「三越製作所」の仕事と日本の建築の歴史を現在に伝える貴重な資料です。ちなみに〈絵図面〉の書式は、基本1/10スケールの正面・側面図。最終プランを鉛筆で清書し、その上から透明水彩絵具で着色して仕上げています。また、卓上小物や調度品を描き込むことで、百貨店で扱う調度品の提案も併せて行うなど、「三越製作所」がトータルで空間づくりを行っていたことがわかります。

2

高御座・御帳台

〈皇居・正殿松の間〉

天皇陛下の即位を公に宣明されるとともに、その即位を内外の代表がことほぐ儀式である「即位礼正殿の儀」(そくいれいせいでんのぎ)。かつては、京都御所内「紫宸殿」にて「即位礼当日紫宸殿の儀」(そくいれいとうじつししんでんのぎ)として執り行われていましたが、1990年(平成2年)、現在の上皇上皇后両陛下のご即位を機に「即位礼正殿の儀」とその名が改められ、以来、皇居「正殿松の間」にて儀式が執り行われることになりました。これを機に新天皇がお昇りになる〈高御座(たかみくら)〉と新皇后がお昇りになる〈御帳台(みちょうだい)〉も京都から東京へと運ばれることになりました。その大役を担ったのが、「三越製作所」。「正殿松の間」に設置できるよう高御座・御帳台の東側と西側の階段を取り外し、高欄をつなぎ改修。漆、錺金具、金箔、彩色画、螺鈿の修繕なども行いました。また、2019年(令和元年)の「即位礼正殿の儀」においても、「三越製作所」がその任を果たしました。

3

「豊明殿」の椅子・張地

〈皇居・新宮殿〉

国賓を招いて行われる宮中晩餐会などの主会場である、皇居・新宮殿「豊明殿」(ほうめいでん)。その名称は昔の宮中における饗宴のひとつであった「豊明節会」(とよのあかりのせちえ)にちなんだものとされています。2010年(平成22年)、「三越製作所」は、この殿舎の椅子の修繕を拝命し、その任を果たしました。展示の菊の紋章が入った椅子の張地は使用されていなかった実物サンプル。使用された張地はさらに完成度が高く、「三越製作所」は、常に精度の高い技術を求められています。

Mockup & Product

三越製作所の名品たち

4

玉座

〈皇居・正殿松の間/試作品 1968年〉

「新年祝賀の儀」や「勲章親授式」、「歌会始の儀」といった主要な儀式が執り行われる皇居「正殿松の間」。展示は、1968年(昭和43年)、に「三越製作所」が製作・納入した〈玉座〉の試作品です。最高級の桜材を漆塗りの最高技法と呼ばれる「蝋色(ろいろ)」で仕上げることで、鏡面のように滑らかで、豊かな光沢感を表現。背もたれ上部の突先と脚部には、真鍮の下地の上に24金メッキが施され、座面や背もたれの張地には絹の特注織が使われました。菊の紋章は当時の高名な刺繍職人が本金糸を用い、手仕事によって仕上げたもの。立体的に表現された刺繍から卓抜した匠の技とその繊細な美意識が伺いしれます。

5

神殿の椅子

〈綱町三井倶楽部〉

1913年(大正2年)、「鹿鳴館」や「ニコライ堂」などの設計も手がけた英国の著名な建築家ジョサイア・コンドルによって建設された「綱町三井倶楽部」。長年にわたり三井グループの迎賓館として公賓や国賓を迎えてきたその建物は、明治・大正期を代表する西洋建築の傑作のひとつと言われています。展示は、ジョサイア・コンドルが竣工当時にイギリスより持ち込んだという椅子を「三越製作所」が当時の姿に復元した〈神殿の椅子〉。オリジナルを原型のまま後世に残すという哲学に基づき、経年変化によって生じたクラックや脚・背もたれのダメージなどを熟練の職人たちが丁寧に修繕。永く愛されてきた家具だけが持つ“時の重み”を匠の技で輝かせることで、100年先まで誇れる家具に蘇らせました。現在、生まれ変わった〈神殿の椅子〉は、「綱町三井倶楽部」で挙式をあげる新郎新婦のために使われています。

6

Jacobian (ジャコビアン)

〈試作品〉

ジャコビアンとは、17世紀初頭に英国を治めたジェームズ一世の時代に発展した建築や装飾、家具の様式のこと。その名を冠した椅子の原型は、その昔「三越製作所」が既製の家具製作を行い始めた頃に生まれました。展示は、約20年程前、当時販売されていたジャコビアンの試作品。アカンサスの花(芸術、また繁栄や長寿のシンボル)をモチーフに、約50種以上の彫刻刀や鑿(のみ)を使い分けながら、17世紀より受け継がれるディテールを忠実に再現。英国気品溢れる重厚な様式美を現代に蘇らせました。また、一度塗装を施したのち、手が触れる箇所の塗装を紙やすりで丹念に剥がすことで、アンティークのような風合いを演出。熟練の職人の技術とセンスによって生み出された一品です。

7

Bamboo Chair (バンブーチェア)

〈城所右文次/1937年〉

シンプルで美しい曲線が見る者を魅了する〈Bamboo Chair(バンブーチェア)〉。竹の弾性を利用してカンチレバー型(片持ち構造)にしたこの椅子は、1937年(昭和12年)に「三越家具設計室」に在籍していた城所右文次(きどころうぶんじ)によってデザインされました。また、当時出品された「三越新作家具展」で高い評価を受けた本作は、近代建築の巨匠ル・コルビュジェの愛弟子であり、日本とも所縁の深い建築家・デザイナー、シャルロット・ペリアンにも強い影響を与えたといわれています。2010年には、独自の曲面成型加工技術に基づき竹製家具を製作している工場の協力を得て、復刻を遂げた〈Bamboo Chair(バンブーチェア)〉。先進的な感性が生んだ傑作の伝統を「三越製作所」は、これからも大切に後世へと受け継いでいきます。

8

topo (トポ)

〈隈研吾/2018年〉 

2018年(平成30年)10月にリモデルオープンした「日本橋三越本店」のグランドフロア。天女像が鎮座する中央ホールへと続く通路に連なるのは、柱上部から天井に向けて光輝く白い「樹冠」。既存の内装に数多く使われていたアールデコ調の植物モチーフを、現代的な意匠として復活させるなど、建築家の隈研吾氏の手によって「白く輝く森」というコンセプトを体現する伝統と革新が融合する空間へと生まれ変わりました。そんな同氏と「三越製作所」のコラボレーションによって誕生した〈topo(トポ)〉は、「樹冠」のデザインを家具へと展開。地形的な凹凸のあるデザイン、オブジェのような佇まいが魅力的なチェアです。素材には、国際的な森林認証であるFSC®認証を取得したサステナブルな木材を使用。無垢材から削りだした天然木の風合いを活かすため、つなぎなどの細部は職人の手作業で仕上げられています。「三越製作所」の100年を越える歴史の中で培われてきた経験と技術、隈氏のクリエイティブな木材への想いが結実した新しい逸品です。

Craftmanship

三越製作所の技

9

道具と素材

歴代の職人たちが、製作する家具に合わせて、ひとつひとつ手作りしてきた道具たち。加工やその目的によって、木部をミリ単位で削り合わせていくため、必然的に膨大な数の道具が生み出されました。展示の鉋(かんな)と鑿(のみ)は、昭和30〜40年頃に使われていたもの。これらの道具は、代々の職人たちに受け継がれ、今も工房内で大切に保管されています。また、ガラスケース横のシェルフに展示した「越」の文字が入ったパネルは、今年新たに生まれ変わった「三越製作所」の新看板のモックアップ。日本建築の伝統加工技法である「名栗(なぐり)」と呼ばれる手仕事で仕上げることで、木目と陰影の美しい究極の亀甲模様を目指しました。

Movie

映像で見る三越製作所

1

三越製作所

〈100年先も誇れる家具と建装を〉 2分39秒 

昨年創立110年を迎えた「三越製作所」の紹介ムービー。国会議事堂や最高裁判所等、時代を象徴する上質な洋家具製作や室内装飾を始め、近年ではブランドショップの家具やファイブスターホテル等の家具製作を手がける同工場。そのものづくり哲学を映像でご紹介します。
動画を見る

2

yoshiokubo 2021-22
秋冬コレクションin三越製作所

〈パリ・ファッションウィーク〉 4分56秒

2021年1月20日にオンライン配信された〈ヨシオクボ〉の2021-22の秋冬コレクション。元々はパリでショーを行う予定でしたが、新型コロナウィルスの感染防止の観点からオンライン配信に変更され、その舞台として「三越製作所」が選ばれました。きっかけは、デザイナーの久保氏が新ユニフォームのデザイン監修を手がけたこと。自らもパターンや縫製など手仕事にこだわりを持つ久保氏が「三越製作所」の職人たちの姿勢に共鳴し、今回のオンラインショーが実現しました。ランウェイを歩くモデルたちとともに映し出された職人たちの姿にも、ぜひご注目ください。
動画を見る